死去から第1審判決まで長期間が経過した事例
セラミック部品メーカーに勤務していた当時57歳の男性が、長時間労働により死去したとして、会社に対し損害賠償請求訴訟を提起していた事件で、名古屋地裁は令和4年8月26日に5600万円の支払いを命じました。
NHK 東海のニュース https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20220826/3000024473.html
男性が心筋梗塞で死去されたのが、平成25年12月。心筋梗塞について業務起因性が認められ労災認定された後、会社に対し雇用契約に基づく安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求訴訟を提起したわけです。
判決が言い渡されたのは、令和4年8月です。
死去から8年8か月もの期間が経過しています。
ご遺族にとっては非常に辛い時間であったでしょう。
会社にとっても、大切な従業員を失っただけでなく、訴訟等の対応の負担も非常に大きいものがあります。
労災事案の損害賠償請求訴訟の審理期間
労災事案の損害賠償請求訴訟の審理期間は長期化する傾向があります。
経験上、一般的に民事訴訟の第1審に要する期間は1年~1年半程度であることが多いですが、労災事件の損害賠償請求訴訟の場合は、2年以上かかることも少なくありません。
平成30年司法統計によっても、審理期間は、民事訴訟全体でも1年以内がもっとも多く、労働に関する訴えは2年以内が最も多くなっています。
控訴審の審理期間
いずれか、または双方が控訴すれば、さらに審理が長期化します。
ただし、経験上、控訴審は、第1回期日で結審し判決言渡しとなることも多く、その場合、一審判決からの期間は半年程度です。
令和2年度の司法統計でも、6か月以内と1年以内が最も多くなっています。
訴訟長期化の批判を受けて、最近は、一審で審理が尽くされているとして、控訴審は第一審より早く判決が言い渡されます。
ポイント
労災事件で、亡くなられたり、重篤な後遺障害が残った場合には、労災認定の後に、民事訴訟が提起されことが多いです。
そのため、紛争解決まで長期化する傾向にあり、裁判の第1審の審理期間に2年以上を要する可能性が高いです。
そもそも、労災事故・事件が発生しないように労働安全衛生につとめることも重要ですが、事故・事件が発生した場合には、初動が重要です。
長時間労働が問題となるケースでは、労働時間はもちろん、労働実態も重要です。事故が発生したケースでは、事故現場の状況を写真や動画で残しておき、関係者から事情聴取をすべきです。
労務実態や事故状況を客観的証拠に基づき整理し、事件の結論を見通して早期に解決することを目指すべきでしょう。
もちろん、どうしても裁判で決着をつけなればならない事案ありますので、その場合には徹底的に戦うことになります。