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労働災害で被災した労働者(業務上負傷・疾病ある労働者)を解雇できるのか

目次

損害賠償請求を理由に解雇はできない

従業員が労災について損害賠償請求したことを理由に解除はできません。

では、労災により怪我や病気をしたことを理由に解雇することはできるでしょうか。

このようなご相談を経営者の方から受けることがあります。

業務上の怪我や病気を理由に解雇することはできるのか

原則

労働者が「業務上」負傷したり、疾病にかかった場合、その療養のために休業する期間と休業終了後30日間は、解雇できません。いわゆる解雇制限です。

なお、ここでいう「業務上」の負傷・疾病かどうかの判断は、労基署の判断ではなく、裁判所の判断となります。

例外

しかし、下記のとおり上述の原則に縛られることなく解雇できる場合もあります。

  • 通勤災害の場合
  • 労基法81条の打切補償がなされた場合
    • 打切補償とは、療養補償を受ける労働者が療養を開始して3年経過しても治癒しない場合、平均賃金の1200日分を支給することで、それ以降の補償責任を免れる制度のことです。
  • 傷病補償年金を受けている場合
    • 傷病補償年金とは、労災でかなり重い障害が残った労働者に対して支払われる年金です。労働者が療養を開始後3年を経過した時点でこの傷病補償年金を受給している場合は、解雇が可能となります。
  • やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
    • 事業の継続が不可能となったことについては、行政官庁の認定が必要です。また、単なる経営難は含みません。

裁判例

解雇制限について争われた裁判例を一つご紹介しましょう。

・専修大学事件(最判平成27年6月8日)

大学職員は、業務上の疾病により就労ができないとして3年以上療養補償給付等を受給して休職しました。

休職期間満了後も復職が実現できなかったため、大学は、就業規則に基づき、職員に打切補償を支給して解雇しました。

これに対し、職員が、解雇無効の訴訟を提起しました。

                                                           訴訟では、労災保険からの療養補償給付金は支給されたものの、大学からの療養補償給付がなされていない場合の、打切補償による解雇の妥当性が争われました。

最高裁判所はこの事件について、「使用者の義務とされている災害補償は、これに代わるものとしての労災保険法に基づく保険給付が行われている場合にはそれによって実質的に行われているものといえるので、使用者自らの負担により災害補償が行われている場合とこれに代わるものとしての同法に基づく保険給付が行われている場合」とで、解雇制限の例外の取扱は変わらない」と判断し、大学側の解雇の有効性を認めました。

松坂典洋
弁護士・社会保険労務士
労災問題に特化する弁護士・社会保険労務士です。労災案件を会社側・労働者側双方から依頼を受けることが多く、労災事故後の対応を誤ることにより、深刻な運送となる案件を目の当たりにしてきました。労使双方にとって不幸な状況を回避するために、労災事故の紛争解決と発生防止に取り組んでいます。
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