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労災事故後に会社が受ける可能性がある行政処分・刑事処分の対策

目次

労働基準監督署との関係(行政指導・行政処分)

労災事故が発生して、労働安全衛生法違反があれば、是正指導や是正勧告がなされます。

是正指導や是正勧告に適切に対応する必要があります。

また、労働安全衛生法違反や労災発生の急迫した危険がある場合には、作業停止・使用停止等の行政処分を受ける場合もあります。

さらに、取引先(他官庁)からの取引停止(指名停止)を受ける等の処分を受けることもあります。

警察・検察との関係(刑事処分)

労災事故について、労働安全衛生法違反や業務上過失致死傷などで起訴されるか否かは、会社や取締役にとって非常に重要です。

罰金、禁固、懲役刑それ自体も重大な刑罰ですが、起訴されて刑事罰を受けることによって、許認可が取消しされたり、技能実習生・特定技能外国人を雇用できなくなったりするなど、事業の継続に重大な影響があります。

また、刑事処分における労働安全衛生法違反の内容が、その後の民事上の損害賠償請求に重大な影響を及ぼします。労働安全衛生法違反で起訴されて有罪となれば、民事上の損害賠償請求において、会社側の安全衛生法違反が認められる可能性が決めて高くなるのです。

労働安全衛生法違反と業務上過失致死傷の関係

上記の通り、労災事故の刑事責任としては、労働安全衛生法違反または業務上過失致死傷罪が問題になります。いずれも刑事上の犯罪ですが、異なる点も多いです。

労働安全衛生法

捜査機関

①労働基準監督官 ➡(書類送検)➡ ②検察官(起訴・不起訴の最終処分)

 最初に捜査をするのは労働基準監督官です。労働基準監督官が捜査を終えた後、検察官に一件書類が送られ(書類送検)、その後、検察官が被疑者(重要な証人)から事情を聴取して供述調書を作成した後、起訴するかどうか、起訴するとして公判要求するのか、略式請求(罰金)で終えるのかを決めます。

両罰規定

取締役や従業員が労働安全衛生法に違反して、処罰を受ける場合、法人も罰金刑を受けます(労働安全衛生法122条)。

第百二十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第百十六条、第百十七条、第百十九条又は第百二十条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

故意OR過失

取締役や従業員は故意がある場合のみ犯罪が成立します。ただし、実際に故意がないとして不成立(不起訴)になる事例は少ないでしょう。

業務上過失致死傷

捜査機関

 ①警察 ➡(書類送検)➡ ②検察官(起訴・不起訴の最終処分)

 最初に実況見分や供述調書作成などの捜査を警察が進めます。

 捜査を終えた後、検察庁に一見記録を送付し(書類送検)、その後、検察官が被疑者(重要な証人)から事情を聴取して供述調書を作成した後、起訴するかどうか、起訴するとして公判要求するのか、略式請求(罰金)で終えるのかを決めます。

両罰規定

労働安全衛生法と異なり、両罰規定はありません。

故意OR過失

過失犯です。仮に故意があれば、暴行、傷害など別の犯罪が成立するでしょう。

労災事故の行政指導・行政処分

指導票

労働安全衛生法違反はないが、改善が必要な場合に交付されます。

改善報告書の提出が求められますので、対応しましょう。

是正勧告書

労働安全衛生法違反がある場合に、是正事項が記載された是正勧告書が交付されます。

是正報告書の提出が求められますので、対応しましょう。

公表等

違法な長時間労働等を複数の事業場で行うなどの企業に対する全社的な是正指導や、平成27年5月から実施している是正指導段階での企業名公表制度の強化などが実施されています(長時間労働削減に向けた取組(厚生労働省)

公表されることで、信頼を喪失すれば、その影響は甚大です。是正勧告を受ける前に、法令違反は改善しましょう。

※ 違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について(基発00328台9号・令和4年3月28日)

是正勧告に従わない場合

法令違反を改善しなければ、同違反について捜査が行われ、書類送検されて起訴される可能性があります。

法令違反がないとして争うことはあり得るでしょうが、合理的な理由もなく是正勧告を無視するべきではありません。

使用停止等命令書

労働安全衛生法違反がある場合に、使用停止等命令書が交付されことがあります。

労働安全衛生法(使用停止命令等)
第九十八条 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、第二十条から第二十五条まで、第二十五条の二第一項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項、第三十一条の二、第三十三条第一項又は第三十四条の規定に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者又は建築物貸与者に対し、作業の全部又は一部の停止、建設物等の全部又は一部の使用の停止又は変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができる。

監督官庁との関係(行政処分、許認可の取り消し)

労働安全衛生法違反により法人または役員が刑事処分を受けることによって、許認可の取消事由に該当し、事業を継続できなくなることがあります。 

                                                                   したがって、法人や役員が刑事処分を受けることがないように、弁護士に依頼して、被害者の示談、再発防止策の策定等に努め、起訴猶予を目指すべきでしょう。

再発防止

労働者の安全を守るために、再発防止策を策定することは非常に重要です。また、上記のとおり、刑事処分や監督官庁からの処分を回避するために、再発防止策は重要です。

松坂典洋
弁護士・社会保険労務士
労災問題に特化する弁護士・社会保険労務士です。労災案件を会社側・労働者側双方から依頼を受けることが多く、労災事故後の対応を誤ることにより、深刻な運送となる案件を目の当たりにしてきました。労使双方にとって不幸な状況を回避するために、労災事故の紛争解決と発生防止に取り組んでいます。
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