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労災事故発生後の初期対応

目次

労災事故が発生した後、何をすればいいですか

救急車の出動要請

何より従業員の生命身体の安全が最優先です。必要があれば、必ず救急車の出動を要請しましょう。

労災の発覚をおそれて救急車の発動を躊躇するなど論外です。

労働基準監督署・警察署に連絡

労働基準監督署への報告

従業員が労災事故に遭った場合、会社側は労働基準監督署に「労働者死傷病報告書」を提出する必要があります。「労働者死傷病報告書」の提出が必要なケースとして、具体的には以下のとおり規程されています。

①労働者が労働災害により、負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき

②労働者が就業中に負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき

③労働者が事業場内またはその附属建設物内で負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき

④労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき

「労働者死傷病報告書」の提出期限は、休業日数によって異なります。

休業4日以上の場合には、遅滞なく提出することが求められています。休業4日未満の場合には、3ヵ月ごとに区切られた期間の中での提出が必要です(・1月~3月の災害の場合は4月末日まで、4月~6月の災害の場合は7月末日まで、7月~9月の災害の場合は10月末日まで、10月~12月の災害の場合は翌年1月末日まで)。

なお、「労働者死傷病報告書」を故意に提出しなかったり、虚偽の内容を記載して提出すると、労災隠しとして厳正な処分がなされるので、期限内に労災事故の事実に則った内容を記載して提出することが重要です。

事故現場の保存と関係者からの事情聴取

重大な事故の場合、警察や労働基準監督官が実況見分を行い、関係者から事情聴取して供述調書を作成します。こうした捜査には協力すべきです。会社としては、事情聴取された従業員からその内容を確認して、会社側でも記録を作成しておくべきです。警察官や労働基準監督官は、会社側の従業員の話をそのまま供述調書に整理するとは限りません。従業員の記憶と異なる表現がされてしまう場合があります。供述調書に署名する前に、全体を確認する機会がありますが、一般に供述調書に慣れていない方が多く、警察官や労働基準監督官が作文した文章に間違った部分があっても、何となく署名してしまうことが多いのです。また、後に民事裁判になった際、その従業員の供述調書が開示されるとは限りません。供述調書まで開示されるのは重大事件に限られます。したがって、会社側でも必ず従業員の調書を作成しておきましょう。

再発防止策の作成および実施

事故の状況を記録に残した後、その原因の解明し、再発防止策を作成します。

労働安全衛生法違反があれば、労働基準監督署から指導がされますが、労働基準監督署からの指導に関わらず、原因の解明と再発防止策を作成して実施すべきです。

労災保険請求手続対応

労災保険請求手続きの対応

基本的な対応

労災事故が発生した場合には、従業員が、労働基準監督署に対して労災保険給付等の請求書を提出して療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付等の請求手続きを行います。

しかし、請求の主体は本来は従業員なのですが、会社による労災事故状況等の証明の必要があるため、事実上会社側で手続することが多いです。

いずれせよ、労災保険請求手続の際、会社は、労災保険給付等の請求書において①負傷または発病の年月日、②災害の原因および発生状況等、の証明をしなければなりません。

証明の方法ですが、請求書に「・・・・・に記載した通りであることを証明します」との文言が印字されていますので、その欄に、日付・事業の名称・事業場の所在地・事業主の氏名を記載して、押印することで足ります。

事故状況や原因が明確であれば、問題がないのですが、事故状況に争いがある場合には、どのような記載をするのかは慎重に判断すべきです。

労災事故に精通した弁護士に必ず記載内容を確認しましょう。

紛争事案に慣れていない社会保険労務士や労災事故に慣れていない弁護士に相談するのは避けた方がいいでしょう。

会社の認識と異なる証明を求められた場合

では、従業員が労災保険給付等の請求書への証明を求めてきた時に、従業員と会社側の認識に相違があり、証明への対応が憚られる場合はどのように対応すべきでしょうか?

工場の事故などで事故の具体的な発生状況に関する認識が違う場合や、うつ病、心疾患や脳疾患などの疾病、過労死等の場合にその原因について認識が異なる場合も少なくありません。

このような事態の場合は、2つの対応策が考えられます。

①まずは、従業員に対して、記載変更の打診をすることです。具体的には、「災害の原因及び発生状況」を客観的状況にとどめる記載に変更するよう依頼します。

しかし、会社側と従業員側の溝は深まっていると考えられますので、従業員が会社側の要請に応じず会社側の証明なく労働基準監督署に請求書を提出してしまう事態も想定できます。

②このような事態になった場合、そのまま放置しておくと、労働基準監督署が会社が協力的ではないというネガティブなイメージを抱きかねませんので必ず対応が必要です。

具体的には、証明に協力できない事情を労働基準監督署に理解してもらうために、記載の変更を打診した書面を労働基準監督署に提出するなどして、事情を説明すべきでしょう。

理由もなく証明を理由なく断ったわけではないこと、会社側の認識の範囲であれば証明する意図があった事実を伝えることが重要です。

逆に、従業員が求めた記載と認識が異なるにも関わらず、安易に受け入れて証明したり、従業員のことを慮って、会社の認識と異なる事実を証明しないよう注意すべきです。労災給付の後に、従業員が会社に対し損害賠償請求した際に、会社側に不利に働くことがありますし、

労災保険給付等の請求書への証明は、負傷または発病の年月日および時刻、災害の原因および発生状況等を証明するものであり、労災を認定するのは労働基準監督署です。労災保険請求の位置づけを会社側としても充分に理解し、適切に対応しましょう。

具体的な状況でどのように対応すればよいかお悩みの場合は、弊所にご相談ください。

弁護士に相談・依頼

労災事故が発生した場合、刑事・行政・民事上の見込みと必要な対応を確認するために、必ず弁護士に相談するべきです。労災保険請求に限れば社会保険労務士でも足りるでしょうが、刑事処分対応や民事上の交渉も踏まえた相談をする必要があり、そのような対応ができるのは、労災事件に精通した弁護士でしょう。

通常は、継続的に相談して助言やサポートを受けながら、会社の人事・総務の担当者が具体的に対応することになります。

しかし、重大事故の場合には、刑事弁護や被害者との早期の示談交渉について弁護士に委任すべきケースもあります。

松坂典洋
弁護士・社会保険労務士
労災問題に特化する弁護士・社会保険労務士です。労災案件を会社側・労働者側双方から依頼を受けることが多く、労災事故後の対応を誤ることにより、深刻な運送となる案件を目の当たりにしてきました。労使双方にとって不幸な状況を回避するために、労災事故の紛争解決と発生防止に取り組んでいます。
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