おとり広告で措置命令
回転ずしチェーン大手の「スシロー」が、去年、実際と異なる表示で不当に客を誘う「おとり広告」を行っていたとして、消費者庁は運営会社に再発防止などを命じる措置命令を出しました。
参考:消費者庁・公正取引委員会 ニュースリリース
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms208_220609_01.pdf
本件では、在庫がなく実際には販売できない商品についても、販売しているかのように広告を続けたことについて、消費者庁が再発防止などを命じる措置命令を行ったものです。
過失でも措置命令を受けます
スシローとすれば、マーケティング活動と現場との連絡がうまくいかずに生じた部分もあるかもしれません。
しかし、積極的に消費者を騙す意図がなくとも、消費者が商品・サービスについて、優良・有利であると誤認する不当な表示をすれば、措置命令の対象となります。
騙す意図どころか、事業者側に過失がない場合にも、措置命令が行われますので、経営者の方は注意が必要です。
措置命令が行われると、その内容が公表されますので、特に上場企業は大きな影響を受けます。
措置命令の内容に従えば、それで終わりということにはなりません。
措置命令の次は、課徴金納付命令の可能性
消費者庁は、措置命令の後、課徴金納付命令の手続に入ることになっています。
不当な表示によって得た利益をはく奪するためです。
本件でも、スシローに対し、課徴金を納付される可能性が高いです。
なぜなら、景品表示法により、措置命令の後に課徴金納付命令に関する手続が行われる制度となっており、課徴金の対象となった行為の商品・サービスの「売上額」に3%を乗じた金額について課徴金として納付するよう命じられるからです。(課徴金対象行為は、改善命令の対象行為と同じであることが多いです。)
課徴金対象行為が一定期間継続していれば、その期間の売上の3%となります。
さらに、課徴金対象行為をやめたとしても、やめた後最長6か月間が課徴金対象行為とされる場合があります。
消費者庁の公表している資料によれば、全国のスシローの店舗が対象となっており、期間は、店舗によって異なりますが、数日から10日程度が対象とされています。
課徴金対象行為の売上が1億円であれば、300万円が課徴金として納付するように命じられます。
スシローのような規模の大きな会社について一定期間が課徴金対象行為となれば、その売上は相当な金額になりますから、課徴金も莫大な金額となる可能性が高いです。
なお、課徴金対象行為をした場合であっても、その事業者が表示の根拠となる情報を確認するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたため「相当の注意を怠つた者でない」と認められるときは、課徴金納付は命じられません。過失がないといえるようなケースですね。
実際に相当な注意を怠ったと認められて、課徴金の納付を免れることができるケースは少ないでしょう。
また、課徴金額が150万円未満(事業者が課徴金対象行為をした商品・サービスの「売上額」が5000万円未満)であるときは、事業者は課徴金の納付を命じられません。
上記以外の場合は、措置命令が出れば、課徴金納付命令を受けると考えた方がよいです。
課徴金を減額する方法
なお、課徴金の金額を減額する方法として、以下の2つの方法があります。
①自主的に消費者長に報告した場合→2分の1減額
②消費者に対し返金した場合→返金相当額が減額
上記①は自首のようなイメージです。改善命令が出された後では行えません。
上記②は消費者が受けた損害分を消費者に返すということです。
手続が煩雑になりますので、現実的に行えるケースは少ないでしょう。
以上のとおり、広告等の不当表示に対する措置命令、これに続く課徴金納付命令を定める景品表示法は大変厳しい法律です。
また、様々な分野で誇大広告が問題となっており、消費者庁は公正取引委員会等の協力を得ながら積極的に取り組んでいますので、広告、看板等の表示には気を配る必要があります。
広告等の表示に不安があるという経営者の方は、お気軽にご相談下さい。